Takashi Tominaga

「オートバイってどうしてまっすぐ走るのだろう?」

「どうやったら速く小さく曲がれるのだろう?」

オートバイに乗っている人なら一度は考えたことがあると思います。

そこで今回は、中学校と高校で習った力学でオートバイの動作について考えてみたいと思います。考察を始める前にモデルを決める必要があります。性能の良い計算機とシュミレーションソフトがあれば、定量的に正確な答えを目標に、細かく複雑なモデルで考えるのも良いかもしれません。たとえば、最近の教習所にあるシミュレーターは乗車感覚にとても近い動きをしますが、ああいったものを作るためにはある程度複雑なモデルを構築する必要があるでしょう。

しかし、細かい数値がわからなくても、どうすれば良いのかを知るだけでも意味があると思うので、今回はなるべく計算をせずに、定性的な傾向を把握することを目標に、限りなく簡単なモデルで考えたいと思います。

前後のサスペンションの動き、ハンドル(前輪)の動き、エンジンからチェーンそして後輪までの動き、タイヤと路面との間の動き、車体の傾き、車体の姿勢変化によるキャスター角・トレール距離の変化、ライダーの前後左右上下の動きとその反力による車体の動き、等々ちょっと考えただけで、たくさんの考えなければいけないことが浮かびますが、とてもまとめて考えられませんから、ほとんどを無視します。

オートバイはライダーを含めた重心位置にすべての重量がある質点と考え、タイヤと路面との間に滑りは発生せずに、接地面も変化しないことにします(図1)。

fig1

また、時間変化を考慮すると複雑になるため、速度は及び傾きは一定で時間変化せず、すべての力が釣り合っている(合力0)の状態を考えます(図2)。

fig2

実線が実際に生じている力で、垂直方向では重心にかかる重力と地面の反発力が釣り合い、水平方向では遠心力と摩擦力が釣り合います。地面が重さを支えて、摩擦で遠心力を支える、というのは直感的にも理解しやすいのではないでしょうか。

fig3

水平方向の力をFx、垂直方向の力をFy、質量をm、重力加速度をa、速度をv、回転半径をr、摩擦係数をμ、地面からの反力をC、として式で表すと

Fx = m {(v^2 )/ r} + m g μ= 0

Fy = mg ーC = 0

となります。

次に視点を変えて、車体に平行な成分と垂直な成分に分解して考えてみましょう。ここでバンク角をθとすると車体を倒す力は m g sinθ、車体を起こす力はm r (ω2) cosθとなり、これが釣り合っているので

m g sinθ=m {(v^2 )/ r} cosθ

移項して

sinθ/cosθ= tanθ= (v^2)/ r g

となります。

tanθはθが大きくなると大きくなるので、θが大きくなると(v^2)/ rが大きくなる、つまり速度が速く、または回転半径が小さくなることで釣り合いがとれることになります。

以上の検討から、二輪車で速く小さく旋回をするためには、バンク角を大きくすることが必要条件、つまり、バンク角が大きくないと絶対に速くまたは小さく旋回することはできない、ということがわかります。

したがって、速く、または小さく旋回をする場合には、タイヤの摩擦力の限界を超えない範囲でできる限り深くバンクすることが重要なわけです。

さらに、回転半径、速度がすべて一定という条件では旋回している場合、車体を倒す力と起こす力が釣り合っていて、バンク角が一定になる、ということもわかるわけです。

ここでさらに、バンク角が増える、または減る条件について考えてみましょう。

先ほどの図3からもわかるように、車体を倒す力は重力を、車体を起こす力は遠心力を由来としています。重力は一定なので、車体を起こすには遠心力を大きく、倒すには遠心力を小さくすれば良いと考えられます。

遠心力は、{(v^2 )/ r}

ですので、大きくするには速度を上げるか回転半径を小さく、小さくするには速度を下げるか回転半径を大きくすれば良いことになります。

すなわち、二輪車を倒すためには、速度を落とすか倒したい方向と逆方向にハンドルを切る、起こしたいときには、アクセルを開けるか起こしたい方向と逆方向にハンドルを切る、ことが必要なのです。

ただし、まっすぐに走っている状態から車体を倒していくときだけは特別で、速度の増減で遠心力が変化しないため、行きたい方向と逆方向にハンドルを切る必要があります。

以上簡単なモデルで力学的に考察を行ってみましたが、このモデルの前提条件(タイヤが滑らない等)を満たす限り以上の結果はすべて必要条件です。

つまり、直進している状態から、バンク角を大きくせずに小さく速く旋回することも、速度と回転半径を変えずにバンク角を変化させることも、行きたい方向と逆にハンドルを切らずに曲がることも、そのほか上の考察に反することは絶対にできないということになります。

乗っている人がどう感じるかは別として、力学的にはオートバイはこのような乗り物なのです。